• 2017.10.20
  • ベーシックインカム
先週、第17回Bien Congressがリスボンの国会議事堂で行われました。
Bienは、Basic Income Earth Network の略で、ベーシックインカム(基本的収入)を研究している人や指示している人たちで成り立っています。
ベーシックインカムとは政府が性別、年齢に関わらず無条件で全ての国民に最低限の生活ができる資金を支給するという制度。
日本では特に社会制度政策的に捉えられているみたいですが、世界では現在、格差社会をなくす唯一の解決策と議論されています。


私は、去年スイスでベーシックインカム導入の国民投票があったのをきっかけに、この事に非常に興味を持っていました。今回、その国民投票に関わった第一人者もいらしており、ベーシックインカムをイメージで訴えていく重要性についてスピーチをされてました。実際彼は、国民投票以前にスイス国会議事堂前で800万個(スイス人口に値する)のコインをばら撒き、その上で活動家数人と「FREEDOM FOR MONEY」というポスターを掲げた抗議をし、メディアに大きく取り上げられた過去があります。結局、スイスでは否決されたのだが、女性が選挙権を得られるまでも大分かかった事実を踏まえれば、この動きはまだ始まったばかりであり、絶対に実現するという信念を持っている学者が多かったのが印象に残りました。

私が今回興味があったのが、AIの急速な発展により仕事が大幅に減ること。20年後には2人に1人が職を失うと言われています。今回の会議では、そういった時代にこそ求められるベーシックインカムが議論されるのだと考えていたのですが、実際そういった内容のトークはほとんどなく、関係者と話していてもベーシックインカムは、AIに奪われた仕事を置き換えるものではないとの意見がほとんどでした。AI化により影響を受ける職が出てくる事は無視できないが、今ままでとは違ったスキルが求められ、人間の「仕事」を再定義する時代になるでしょう。


今会議で、多くの研究者・活動家の発表で共通していたのが「自由」というキーワードでした。基本的収入があることにより、 格差社会(貧富の差だけでなく、失業者の問題、女性の立場、障害者の権利など)のギャップを縮められること。やりたくない仕事には「NO」と言えるようになること。逆に、保育士、介護士、教師といった社会的には価値は高く、機械では代替できない給与はそれほど高くない、という仕事に就きやすくもなります。
どんどん大きくなってしまった資本主義の歪みを是正するのがベーシックインカムなのではないでしょうか。

余談になりますが、ポルトガルの植民地だったマカオでは、国民に年間約1000ユーロ支給しています。月の平均所得が750ユーロ弱のポルトガルでは、マカオの国籍を取得し、1000ユーロを手にしようとする人が存在します。元植民地だけあってポルトガル人は、マカオの市民権を得やすいのです。こうした話は、私を複雑な気持ちにさせます。
グローバル化が進んだ現社会では、ベーシックインカムの意識をグローバルに広め、実現させていく必要があると強く感じます。今後もまだまだ議論が続くでしょうが、数十年後には想像もしていなかった未来がやって来るのではないでしょうか?

特派員

  • 太田めぐみ
  • 年齢丑( うし )
  • 性別女性
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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