- 2017.03.29
- 大切なのはおいしさ? 美しさ? それとも両方?
デザインケーキは徐々に下火になっているのでしょうか。少なくとも、ほんの数日前にニューヨークで閉幕し、私ものぞきに行った今回のケーキ・デザイン・フェスティバルでの関心の高さを見る限り答えはノーです。このイベントは主にワークショップ、デコレーション・レッスン、優勝作品を選ぶ「スタンディング・ケーキ」コンテスト、ケーキ型やフォンダン(砂糖衣)に関する最新トレンドの紹介などで構成されています。この10年、デザインケーキはデザートの常識を覆し、食べる前にデザートを目で楽しむということを私たちに教えてくれました。現在ではプロが作るお菓子もホームメイドのお菓子も、とにかく視覚的に魅力的であることを競い合っています。
どんなトレンドもそうですが、トレンドはある時点で終わりを迎えるものです。しかし、重要なのはそれがいつなのか予測することです。デザインケーキのビジネスは競争が激化していますし、他との差別化を図るのは困難です。これは特に、砂糖で作ったバラ、渦巻き状にかけたシロップ、フォンダンの動物など、作り手がたいてい同じようなテクニックしか身につけていないためです。ひとつはっきりしているのは、レシピ、原材料、トッピング用フルーツの選択が重視されなくなり、残念なことにこれは味についても時として当てはまるということです。デコレーションはかなり過剰で、精巧かつ立派ですが、これは単なる装飾として強烈な印象を与えるためだけに作られている場合が少なくありません。数年前はチョコレートケーキですんだものが、今はブロンズ像のような芸術的逸品に仕上げなければいけないのです。そのためケーキは作品として台の上に置かれて、食べることは二の次で作られていることもあります。それはまるで快適さを度外視し、美しさだけを追求した椅子のようです。昔ながらのスポンジケーキには、何層ものアイシングや細部まで過剰なデコレーションを支えるにはあまり適していないものもあります。ケーキの底部にかかる重みはすごいですから、どっしりとした作りにしなければならないのです。
でも、フェスティバルで混雑した展示台の周りを歩いていたら、ネイキッドケーキという新たなトレンドに出会い、感心しました。ネイキッドケーキはウェディング・ケーキや豪華な誕生日ケーキの新たなトレンドです。流行はひとつの方向だけに向かうものではなく、まったく正反対の方向に進化を遂げることもよくあるものです。フォンダンが好きではなくて、プラスチック・チョコレートで作ったデコレーションやシュガーアートにうんざりしているなら、ネイキッドケーキがおすすめです。このケーキがネイキッドと呼ばれているのは、シュガーペーストの「ドレス」をまとっていないからです。表面は家庭で作るものと同じようにクリームでコーティングされているだけで、デコレーションされている場合でも主に自然由来のフルーツや生花などが使われます。
繊細でロマンチックな透明感のある水彩画のような色合いと、装飾効果ではなく抽象的テーマを取り入れた今年のこの新しいデザインケーキによって、よりオーソドックスなおいしいケーキに「戻る」ことができると知って私はうれしくなりました。このケーキを作るには、生地をマーブル模様や木目調にするために2、3色のシュガーペーストを混ぜるテクニックを用います。その上にバタークリームでできた花冠や色のついたメレンゲをシンプルに飾りつけます。おいしさは美しさと同じくらい大切なことですから、より伝統的なレシピに戻ることは重要なことだと思います。そういうわけで、今回は読者の皆さんに私のレッド・ベルベット・ケーキのレシピをご紹介しましょう。
レッド・ベルベット・ケーキのレシピレッド・ベルベット・ケーキはとてもおいしい、いかにもアメリカ的なケーキです。特徴は真っ赤な美しい色合いで、トッピングのクリームやフィリングの白によく映えます。このケーキのレシピの歴史は1900年代初頭 にまでさかのぼり、ニューヨークのウォルドーフ・アストリア・ホテルのレストランで提供されたのが始まりです。当初はココアの酸とバターミルクの化学反応を利用して赤色を出していましたが、今は食紅を加えて鮮やかな色に仕上げています。レッド・ベルベット・ケーキはアメリカで最も人気のあるデザートのひとつで、世界的にも人気が出てきています。それでは、私のレシピを以下に掲載します。ケーキの材料:小麦粉450g(室温に戻した)バター180g(室温に戻した)Lサイズの卵3個砂糖450g液体の食紅 小さじ5杯無糖ココアパウダー15gバニラ・エクストラクト6g塩8gバターミルク380g重曹7gクリームの材料:小麦粉50g全乳1/2リットル(室温に戻した)バター450gグラニュー糖400gバニラ・エクストラクト10g作り方:3段の円形のレッド・ベルベット・ケーキを作るには、まず柔らかくしたバターを半量の砂糖と合わせて、白っぽくふんわりするまで10分間混ぜます。卵を1個ずつ加え、都度、残りの砂糖の3分の1を加えて混ぜます。その後、ふるったココア、食紅、バニラを加えます。小型のボウルにバターミルクを入れて塩を溶かし、重曹を加えます。バターミルクをよく混ぜ合わせます。油を塗り、粉をふった直径24cmのケーキ型3つに、この生地を均等に流し込み、180度に予熱したオーブンで25分から30分ほど焼きます(つまようじで焼き加減をチェックしてください)。 その間にクリームを作ります。小型鍋にバニラ、小麦粉、冷たい牛乳を入れて泡立て器で混ぜます。常にかき混ぜながら弱火で10分間煮ます。できあがったクリームを容器に移し、ラップをかけて室温になるまで冷まします。バターと砂糖を合わせてふんわりと軽さが出るまで攪拌し、バニラを加えてさらに1分間混ぜます。これにクリームと小麦粉を加えれば、ケーキに挟んだり、表面に塗ったりするバニラクリームのできあがりです。ケーキ生地が焼き上がったらオーブンから取り出して冷まします。お皿に1段目の生地を載せてクリームを塗り、2段目の生地も同様にします。3段目の生地を載せ、その際ケーキの表面にバニラクリームを塗ります。ケーキを冷蔵庫で保存する場合は必ずガラス製のケーキカバーで覆って乾燥しないようにしましょう。室温に戻して召し上がれ!
特派員
- クラウディア・ ディアス
- 年齢午(うま)
- 性別女
- 職業ニューヨーク大学教授
私は、ニューヨーク大学でスペイン文学と演劇の教授をしていますが、もともとはカリフォルニア出身です。余暇には長い時間散歩をするのが好きです。ニューヨークでは常になにか新しいものをあちこちで見つけることができるので、それが本当に大好きです。この街のお気に入りの季節は秋です。秋にはセントラル・パークの紅葉が素晴らしく、私の大好きなハロウィーンもあるからです。
私のブログを通してみなさんにニューヨーク市と、私の住むブルックリンに興味を持っていただきたいと思います。また、ここに住む人間の目から見たビッグアップルについての新たな視点を紹介したいと思います。
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